デイケアに通所できない老夫婦

目が見えなくなってきているカツジさん

持病の前立腺の病気も悪化して

１カ月の入院を余儀なくされました。

だんだん光の無くなる現実と

自由の利かない体

認知症という暗闇に入るには

それほど時間はかかりませんでした。

それでも入院中は

リハビリの開始で

なんとか会話もできるようになり、

手探りで　おトイレにも行けれるようになりました。

ただ、時折発する意味不明な言動と癇癪は

奥さんには　たまらなく不安でたまりませんでした。

やふがて　前立腺の治療も終わり退院となったものの

奥さんは　自分一人で背負わなければいけない

カツジさんのお世話に

言い知れぬ不安と恐怖を抱えていました。

この不安が　現実となって現れたのは退院３日目です。

カツジさん

退院後はデイケアに通所予定でしたが

その日の朝大きな声を出して暴れて

着替えもせず　家から出ようとしませんでした。

止む負えずお休みとなりましたが

これが３回続き、とうとう奥さんから

「なんか暴れて　行かせられません」とのことで中断

それから３週間

私は　この老夫婦が心配で　ご自宅まで見に行きました。

思いのほか　奥さんはお元気ですが

カツジさんは　ほとんど目が見えなくなったようで

捉えられない視点が　怖い位険しさを放っていました。

「ケアマネさんが　診察して主治医に相談して来い、

っいうから、明日病院連れて行く。

夜も寝れんし、内科の先生に相談してくる」と

「お母さん　一人で行くんですか？」

「そうや。誰が一緒に来てくれる。

私一人や、子供も遠くて何も来んしね」

介護サービスを入れたくても

暴れて　頑なに拒むカツジさんに

奥さんは　支援の手を受け入れる事が出来ません。

目の前で苦悩している老夫婦に

その障害の解決の糸口すら　たどり着けない

自分の無力さと限界

もしかしたら　デイケア等で

サービスをきちんと受けられている高齢者は

ほんの一部しか過ぎないのだろうか

そんな不安を抱えながらの帰り道でした。