デイケアは家族の支えでもあるのです。

先日、当デイケアを利用されていた方の娘さんが、

私を尋ねていらっしゃいました。

元々足の悪い娘さん、年頃は40代後半。

さらにその足は重く固くなり、体を引きずるようにして歩かれてます。

その様子をみてすぐに「ただ事ではない」

との予感が私の脳裏を走りました。

少し間を置き、「あの~、主人が余命1か月です。」

半泣きで話される娘さん。

「なぜ、私に話されるのだろう。」

そんな疑問を持ちながら、私は彼女の話を聞き始めました。

ご主人は肺癌で治療中。しかしその癌は脳に転移。

あと1週間余りで意識がなくなり昏睡状態になると。

主治医から宣告された余命1か月。

彼女には2人の子供がいます。1人は学生。1人は社会人。

とはいえ、まだまだ親が必要な年ごろ。

でも、自分は足が悪く働くこともできない。

ご主人の介護も看病もままならない中、

今日まで頑張ってきたのです。。

でも死を宣告された今、

自分は何を支えに、何を励みに、誰を頼りに生きていけばいいか

わからなくなったと。

その時頭に浮かんだのが

「お母さんが最後まで通い続けたこのデイケア」だったのです。

彼女は、今の自分の悩みに、

答えを求めて「ここ」に来たのではないのでしょう。

どこかに「亡きお母さんの息吹」を感じたくて、

ここに来たのかもしれません。

 

彼女が一通り話し終えると

「お母さんのリハビリを最後までさせていただいたこと、

これは私の大きな財産です。」

答えにもならない私の言葉に、彼女はハラハラと涙し、

「ありがとう、ありがとう」と私の手を強く握りました」。

そして」、泣くだけ泣いて「ありがとう」と、

私に背中を帰っていかれました。

きっと、ご主人の死を受け入れた瞬間だったのでしょう。

私は無力で小さな人間です。

でも、その小さな人間が、ほんの少しだけ足元を照らすことができるのであれば、

それはとても大きな幸せだと思います。

真っ直ぐに歩く彼女の後姿。

重たい足が、少しだけ歩く軽くかんじたのは、

無きお母様が背中を押しているからでしょうか。

 



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