介護現場と家族と病院と

介護現場と家族と病院と

今日は「できること」「できないこと」

の狭間で悩んだご家族の話をしましょう。


以前のブログでお話したカネコおばちゃんの

何年も前のお話です。


カネコおばちゃんがよく転び始めた時の事です。

立ちあがるとすぐにバタリと転び

一歩足を出すと ドタンと体ごと倒れます。


この進行性核上性麻痺は その転び方が特徴的です。

けっして バランスをくずして フラフラ転ぶのでもなく

力がなく 足元から転ぶのでもありません。

体が1枚の板のような ブロックのように一体化して

そのまま 全体に頭から転びます。


だから とても危険なんです。

頭を打つ どこかを強打する そんなリスクと背中合わせです。

私は そのためデイケアでは自立歩行を禁止しました。

介護するスタッフのためにも ご本人のためにも


でも カネコさんは ご自分の病気を知らされていないから

転んだ事を覚えていないから

車椅子対応になった事は 納得できていません。

ご主人は奥さんの「歩きたい」「歩けない」と「事故と怪我」の狭間で

いつも苦しんでいました。

 

そして とうとうご主人は過労でダウン

おばちゃんは病状が不安定なこともあり

市内の療養型病院に入院しました。


ご主人も落ち着き カネコさんの退院を控えた担当者会議

病院医師 看護師 ケアマネ 

こちらの看護師も立ち会い行われました。


私は勤務の都合上 出席できませんでしたが、

この時の結果報告が 私には衝撃的なものでした。


病院側から言われたのは

「歩きたいから 歩かせて下さい」です。

もちろん 「自分達も歩かせています」と。


私の出した方針と正反対です。

ご主人は、病院の了解をもらったことで

退院後は自宅で歩かせました。


この時、病院と在宅は違う事を 誰も気がつかなかったのです。

しかし それからのカネコおばちゃん

あざや怪我が絶えません。

ご主人もさらに疲労がかさみ 腰痛を悪化させました。

そしてとうとう カネコさん頭を打ったのです。

 

その時ご主人が言った言葉は

「病院だから 歩かせられたんです。

私一人じゃ とても無理です。

でも 私もその気になってしまって。」


ご家族や利用者さんは 

「できる事」「出来なくなってきている事」

「してはいけないこと」は手探りなんです。

でも、過去の能力を引きずり

現実を正視できません。

この時 私達スタッフが間違った判断をすると 

必ず悲劇を迎えます。


視力障害の人 歩行能力の極めて低い人 

「歩きたい」気持ちと「歩いても大丈夫な人」

この判断を正しく見極めること これも介護力です。

そしてこの 判断から介護方針が決まります。


ご自分が「歩ける事を信じて」歩いた カネコおばちゃん

痛々しい傷の処置を終え おばちゃんはデイの部屋に返ってきました。

リハビリ室から戻った私に おばちゃん 手を精一杯伸ばし

「先生 私は先生がいなかったら 

どうすればいいかわからないんです。」


抑揚のない 消えるような声で

周囲に翻弄され 狭間で苦しんだ末にでた言葉


この言葉を聞き

「この人は 私が絶対守ろう」と

強く強く 心に誓いました。

 



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介護ママの伝えたい介護のツボは、
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どうしたらいいか分からないなどお悩みのことがあれば、
こちらの連絡先にお気軽にご相談ください。

可能な限りお力添えさせていただきます。


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36 Responses to “介護現場と家族と病院と”

  1. 介護ママ より:

    >にこりんさん
    ご本人の希望と、能力と、自分達のできる範囲この狭間も又、難しいです。介護専門職、私の様なリハビリ職、看護師、家族と立場の違いと考えの違いで分かれることも多々ありますね。

  2. 介護ママ より:

    >不肖さん
    危ないからと、患者さんを制限する事も違うと思います。形をかえて、希望に添える、つまり安全な歩行をできることが理想です。でも、責任を家族に背負わす判断は、間違ってると思います。このケースはまさにそうでした。

  3. 介護ママ より:

    >銀蓮さん
    そうですね。無責任な状況で希望を通そうとしている現状に、家族の無理が出たようです。

  4. 介護ママ より:

    >おばちゃんさん
    いつもありがとうございます。このブログを発信するとき、少し不安でした。でも元気が出ました。かき切れない事がいっぱいありますが、頑張っていきます。

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