孫のためなら、えんやこ～ら

骨折して　歩けなくなったキヨさん

退院して　デイケアでも　リハビリ頑張ってました。

なんとか　歩行器を使って　

院内の移動はできるようになったのですが

長歩きするには　体力がついていけません。

そんなキヨさん

「孫が　昨日急に入院したんです。

ここのところ　仕事が忙しくて　無理したらしく

とうとうダウンしたらしいのです。」と

半泣きで話されます。

お孫さんの母親が仕事で忙しい時

いつも　キヨさんが傍にいて

お孫さんを見守っていたから

入院と聞くと　いたたまれなくなったようです。

そして　「孫が２階に（デイケアは病院の中にあるので）

入院してるんです。心配でたまらなくて。

顔を見に行ってもいいですか」と。

そこで　昼食後の昼休み　

私と一緒にお孫さんの病室まで行く事としました。

キヨさん　いつものように歩行器でフロアーを出てきて

そのまま出発です。

私も　うっかりしてました。

キヨさんが２階まで歩行器で行くほどの体力がないかもしれないと

気に止めもしなかったのです

でも、キヨさん頑張りました。

途中息切れしながらでも、　歩くペースはいつもよりはやく

わき目も振らず一目散に歩く姿

「大丈夫？」と声をかけても

返事もせずに　なにかに取りつかれたように歩き続けるその姿は

孫を思う一心なんでしょう。

やがて　お孫さんの部屋に到着すると

キヨさん　胸元から　小さな包み紙を出しました。

「ばーちゃん　わざわざ持ってきてくれたん」

それは　キヨさんがいつも持っていたお守りです。

その下には　チョコレート1つ

「タカチャンが好きなチョコや」と

お孫さんはもうすぐ２７歳

でも　キヨさんの心の中は

小さなままのお孫さんだったんです。

「ばーちゃん　ぼく大丈夫だから。

ばーちゃんこそ　どうやってここに来たん？」と

かえって心配してくれたお孫さんに

キヨさんは　笑顔で

「この人に連れてきてもらったんや」と

喜んで　話して下さいます。

何気ない　生活の中のヒトコマ

それでも　言いようのない幸せを

ほんの少しだけお手伝いできたことの喜び

この仕事をしていてよかったと思えた瞬間でした。