歩きたい本人と歩かせたくない家族

歩きたい本人と歩かせたくない家族

今日は デイケア主任との意見の違いからでた失敗談のお話をしましょう。


シズコさんは圧迫骨折をして 腰痛が生じ 歩けなくなりました

 

それでも 時間の経過と共に痛みはやわらぎ

そろそろ 外の空気が恋しくなり始めたのですが

ご家族は「転ぶから」「今度転んだら 寝たきりになるから」と

外出はおろか 家の中でも 中々 歩かせてくれないようです。


ようやく ケアマネの勧めでデイケアに通所が決まったのですが

ご家族は

「うまく歩けないし 転ぶといけないから 歩かせないでください」

と デイケア側に言われました。


でも 社交的なシズコさん 歩きたくてムズムズしてます。

だから リハビリはとても意欲的で頑張り屋さんです。


シズコさんのリハビリ担当は 後輩の若くて熱心な青年です。

シズコさんの強い思いと後輩の誠実な対応が

確実に芽を出し シズコさん またたくまに歩けるようになりました。


リハビリ終了後は 孫以上に年の離れた後輩と

楽しそうに手をつないで 歩いてデイケア室まで帰ります。

 

歩いてる事を 体全体で喜んでいる様子に

私も嬉しく感じていました。

 

それから数日後

車椅子に乗ってるシズコさん

通りかかった私を呼びとめて 話されました。

 

「ここは 歩かせてくれないのでしょうか。

私は 歩きたいのに

お風呂にいくのも トイレにいくのも この椅子に座らされて。

ちょっと 立つと 『危ない』と言って 座らさられるんです。」

「シズコさん 歩けましたよね」と私が聞くと

「はい、歩けます」と即答です。

確かに リハビリでは歩けるようになってます。


その後 デイケア主任(元看護師)にこの話をすると

思わぬ答えが返ってきたのです。


「ご家族が 危ないから 歩かせないでくださいと言ってるのに

こちらが 勝手に歩かせることはできない」と


「は~???ご本人の気持ちが優先でしょ。

それにシズコさんは歩けるんですよ」と私が言い返すと

「それは 先生の考えでしょ。

私達はご家族の味方なんです」と


シズコさんが また転んで 介護の手がかかる事

寝込む事を恐れて 歩かせない事

これが 本当の介護と言えるのでしょうか。

いえ 介護のプロがする事でしょうか。


苛立ちを通り越して 呆れて 返す言葉も見つかりませんでした。


与えられた時間を有意義に 人として当たり前に暮らす事が

弱い高齢者には与えられないのだろうか、

と苦悶しながら 私は席をはずしました。


そして シズコさんは 私に声をかけた日を最後に

デイケアには来なくなりました。

 

「あんな所 行きたくありません」と

電話で告げて 家にこもられました。

 

私が あの時 

もっとうまくシズコさんの気持ちを代弁できていたら

シズコさんは やめずに済んだかもしれないと思うと

介護現場の難しさを あらためて痛感した失敗例です。



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24 Responses to “歩きたい本人と歩かせたくない家族”

  1. 介護ママ より:

    >☆vigorist☆さん
    はい、お恥ずかしいですが、この主任の教育から始めなければならないと思いました。

  2. 介護ママ より:

    >笙子ママさん
    そうですね、このようなご家族は少なくないと思います。本来利用者さんの気持ちを救うべき私達が救えないのが何よりも悲しいです。

  3. 介護ママ より:

    >minnataisetsuさん
    はい、無力感を感じました。自分の思いを家族や主任に伝えれなかった苛立ち。でも、自分の方針はかえずに利用者さんを応援していきたいと、あらためて強く思いました。

  4. 介護ママ より:

    >みいはなさん
    そうですね、誰のための介護であるか、誰のためのリハビリであるかを、時間をかけてしっかり伝えていかなければならないのでしょうね。

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