癌のご主人と認知症の奥さん

チャコさんは脳梗塞をきっかけに　認知症になりました。

厳密には　妄想のような思い込みが強くなり

小さな子供のように　ご主人に甘えてます。

そんなチャコさんを

ご主人はまんざら悪い気がしません。

「こいつの面倒は　オレしかみれないから」と

朝は　車でデイケアまで連れてきて下さいます。

髪も　ご主人が染めています。

ご飯の用意も　洗濯も　お掃除も全部ご主人です。

ご主人の口癖は

「こいつは何もできないから」です。

平気で　ご本人の前で　奥さんをけなしています。

でもチャコさんは　そんなお父さんを

ニコニコしながら見ています。

とても不思議なご夫婦です。

そして　深い愛情に包まれてるのが伝わります。

そんなご主人が　癌になりました。

癌細胞は　大きく体を支配し　手の施しようがありません。

それでも　ご主人は　頑張って　主夫をしています。

青白い顔で　杖にもたれるように　廊下をあるいてくる姿

なぜ　そこまでしてと　問い詰めたくなる一コマを抑えて

今日も　ご主人がチャコさんのお迎えにおいでます。

チャコさんは　ご主人が癌だって知りません。

いえ　言えないのです。

ご主人も　私達も　お子さん達も

誰も・・・

これを告げると

ご主人もチャコさんも　明日を生きていけなくなりそうだから

だから　癌だと告げないでください