糖尿病で失明、統合失調症、認知症のおじいさんの介護

糖尿病で失明、統合失調症、認知症のおじいさんの介護

今日はずっと昔にさかのぼって
前の病院で 出会った
中途失明のおじいさんのお話をしましょう。

私がこのおじいさんと出会ったのは
まだ認知症のことを 痴呆やボケと言っていた時代です。

 

糖尿病で失明し 1人で歩くことも 排泄することも
食事も綺麗に 食べられなくなったおじいさん。

ADL(身に周り動作)訓練の指導とのことで
リハビリに来られました。

私自身 身体機能の障害を持った方の
ADL訓練なら 経験ありますが
中途失明者のADL訓練は 初めてでした。

難聴と理解力の低下、認知症も伴い
十分なコミュニケーションが取れるとは
到底言いがたい 状況の中
ただ ボソボソと話す内容は
理解不明瞭で、認知症とは違う
独特の違和感がありました。

それからしばらくして
私が退院に向けての 在宅訪問をした時です。

家の様子を一通り 確認した後
奥さんが おもむろに ご自分の苦労話を 始めました。

その時 初めて分かったのです。
おじいさんが 統合失調症 であることを。

だから 目が見えないだけではない
理解できない話の内容の違和感
見えないのに 見えているように話す 幻覚

 

当時は 作業療法士としての経験も浅く
今 目の前にいる この方を 私はどうやって
在宅に持っていけばいいのか
どうやって 安全な在宅生活を送るように導くべきか
不安と混乱で 頭が破裂しそうでした。

 

それでも「プロ」ですから
そんな動揺は出せず ただただ 奥さんの
苦労話しに 耳を傾けていました。

 

とめどなく 流れる 奥さんの苦労の数々

状態の悪い時は 包丁を持って暴れた事
子供と一緒に 隣に家に隠れていたこと
お金がなくて 貧乏したこと
離婚を考えた時 姑から 子供と引き離された事 等等

若かった私には
なぜこんなにしてまで 夫婦でいなければならないのか
そんな 根本的な事すら わかりませんでした。

 

それでも
泣きながら 私のような若輩者に話す 奥さんの心の内は
深い深い 海底に沈んだ 大きな箱を開けたような
そんな重みを感じました。

 

しかし 最後に奥さんが放った一言は
私の胸めがけて 深く射抜きました。

「でもね、今は幸せや。2人の小さい孫が この人の両手を引いて
 歩いてくれとる。辛抱してよかった。」と

 

老々介護 認々介護と謳われる昨今
時々 このおじいさん夫婦を 思い出します。

目が見えなくなり 耳が聞こえなくなり
物忘れも進行してきた おじいさんを

「辛抱してきたから 今は幸せや」と受け入れてる奥さん。

 

夫婦にとって ひと時の辛さや悲しさは
何十年後に迎える 大きな幸せのための
栄養剤となる事もあるのでしょう。

 

「辛いだけが介護じゃない!」との信念で
飛び込んだ 介護の世界
挫けそうになった時 前がわからなくなった時
私に 勇気と決断を与えてくれる ご夫婦との姿は
生涯忘れることはありません。

 

そして今 この出会いに感謝し 一人でも多くの老夫婦の
支えになりたいと思います。



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