老々介護のささやかな夫婦愛
おじいさんが 得意げな顔で私に見せてくださいます。
「これね、家内が作ったんです。
私が水虫だといったら これがいいよ、って編んでくれたんです。」
奥様が、敬老教室で作ってきた布草履
決して上手とは言えない 少し凸凹して 足に当たりそう
不揃いな編み目と 左右のアンバランスが どこか暖かで
見とれてしまいました。
すると おじいさんが
「せんせい。これを風呂上りに履いていいですか?」
と聞かれます。
「これ、お肌にはいいでしょうが、歩くと滑らないですか?」
と私が聞くと
「そこなんですよ。家内が折角私のために作ってくれたのに
滑るから 履けないなんて言えなくてね。
せんせい、何かいい方法ないですか」と相談。
そこで 思いついたのです。
踵にマットの滑りとめを縫い付けました。
おじいさん 大喜び
出来あがった草履を大切にカバンにしまい
おうちに持って帰りました。
今頃 奥様の前であの草履をはいて見せているでしょうか。
90歳と85歳。
老々介護の教科書のようなご夫妻。
目の前の障害を 自分たちの力で 乗り越えようと
毎日頑張ってます。
私達は そんな頑張りを
両手で静かに受け止めていかなければならないのです。
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