難聴と認知症のおばあさんの介護

難聴と認知症のおばあさんの介護

今日は 貝になったおばあさんのお話をしましょう。

シズさんは 耳が遠く
補聴器をお嫁さんにかってもらいました。

はじめは よく聞こえたのですが
やっぱり 段々聞こえなくなり
とうとう 補聴器をしていても
聞きとる事が出来なくなりました。

それでも メモを使って 筆談することで
ささやかな デイケアのスタッフと 会話をしていました。

しかし そんな シズさんの会話も長くは続きませんでした。

シズさん 耳が聞こえなくなってからは
坂道を 転がるように 認知症が進んだのです。

やがて 文字を読むことも 話す事も出来なくなりました。

話しかけても 目をジーとみて 悲しそうにうなずくだけ
メモを差し出しても 口をモグモグして うつむくだけ
いつのまにか 声を出す事もなくなり
誰もシズさんの傍に行かなくなったのです。

ひとりぼっちで 椅子に座り いつも塗り絵をしているシズさん

それでも 移動はシルバーカーで自分で行っていたのですが
ある日 突然 歩けなくなったのです。

いえ 正確には歩こうとしても 足が出ないのです。

乗り移りや立ち上がりはちゃんとできるのに
ただ歩けないだけなんです。

歩こうとすると 体がかたくなり 動けなくなってしまいます。

自分の足を前にだせないシズさん
もどかしさで 出てくるのは 悔し涙だけ
下を向いて 声にならないうめき声を殺すように
とめどなく流れる 悔し涙

昨日までは 確かに歩けたのに
今日は 言う事を聞いてくれない

身も心も貝になったシズさん

私があなたにできることは
あなたのその閉ざされた貝殻が
いつかは 開いてくれるのを信じて
静かに待つことです。



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7 Responses to “難聴と認知症のおばあさんの介護”

  1.  美味し物は食べられますか?散歩は?
    どんな誘導したか、そっとしておいたか、また教えて下さい。

  2. ミイ☆ より:

    耳が聞こえなくなってくると どーしても 周囲との関わりが減ってしまいますよね…
    足の方も出なくなってシズさん自身が はがゆい思いをされているんでしょうね。
    少しでも 閉ざされた貝殻開きますようにと思いました。

  3. アーサー より:

    なんて悲しいことでしょう…。
    私は連日の母の徘徊に悩まされていて、「いっそのこと歩けなければ徘徊もしなくて楽なのに」と思ったことがあります。
    この話を読んで、そんなことを思った自分が恥ずかしくなりました。

  4. 介護ママ より:

    >だいじょぶだードッカンヘルパーさん
    了解です!シズさんのお話しは、続編があります。その時お伝えしますね。

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