頑固なおばあさんと優しいお嫁さん

優しいお嫁さんと同居して

性格も人生もかわったおばあさんのお話をしましょう。

ミサさんは　広い広い田んぼを一人で耕し

お米を作って子供達を育てました。

その男勝りの性格と　田舎育ちの言葉の荒さは

都会の大学を出た息子さん達にとって

段々　煙たくなってきたのです。

やがて　息子たちの心が田舎から少しずつ離れていくと

それに背を向けるように

ミサさんも頑固さが増し

憎まれ口がポンポン飛び出すようになりました。

それは子供たちだけではなく

お嫁さん、お孫さん　やがては近所の方にも

粗い言葉を話すようになったのです。

そして　追い打ちをかけるように　認知症が発症

近所の方から息子さんや娘さんの所に

何度となく電話が入り始めます。

とうとう　子供達にあいそをつかれたミサさん

家族会議で施設入所が決まりかけた時です。

当時デイサービスで看護師をしていたお嫁さんが

その家族会議をさえぎるように言葉を切りだしました。

「私がお母さんのお世話をします。

私が見れなくなったら　施設に入れて下さい。」と

人一倍我がままで　頑固なミサさん

「たとえ長男の嫁とはいえ　同居なんてできるわけがない」

みんながそう思ってました。

しかし　周囲の人達を　このお嫁さんは

いい意味で裏切ったのです。

人は本当に優しい人に出会うと　変わるのです。

それは　まるで閉ざされた氷が解けるように

降り積もった雪が流れるように

頑なな虚勢をとかしてしまうのです。

今、ミサさんは優しいお嫁さんと

親子のように手をつないで　お買い物に行かれます。

デイケアの日は「行って来るね」と

手を振って　車に乗られます。

あんなに固執していた田んぼも手放し

かわいいおばあちゃんになってます。

ご主人を早くに亡くし

誰にも頼らず　一人で生きてきたミサさん

これから迎える老後も　そう覚悟していたミサさん

今は　優しいお嫁さんと　孫、ひ孫に囲まれ

少し離れた所で　見守ってくれている息子さん

最高の人生を送られてます。