若年性認知症と友達と私

若年性認知症と友達と私

介護の現場にいると
思いもよらぬ所で 暗闇に陥ることがあります。

今日は 久しぶりに再会した友達と
若年性認知症のご主人との出会いのお話しをしましょう。

朝 いつものようにリハビリを始めようと
廊下に出たとき リハビリ室の前に
1人の女性が座っていました。

すぐに お互い顔を見合わせると
誰だかわかり、再会を喜び、懐かしみました。

しかし 彼女の「ここにいるの?」の一言で
私達の再会が
決して幸せでない事に気づきました。

「そう。どうしたの?誰か怪我したの?」
私が尋ねた時
彼女の顔が急に曇り 涙目になったのです。

「主人が脳腫瘍で 大学(病院)から ここに来たの」

 

以前から 脳腫瘍で 若年性認知症を呈していた
患者さんの名前を知っていましたが
その方が彼女のご主人だとは思ってもいませんでした。

彼女のその一言を聞くまでは。
手術をしたとはいえ、ご主人の様態は悪化進行し
まもなく彼女も それ以来リハビリ室には来なくなりました。

 

1年ぶりに リハビリ室を訪ねてきたご主人は
目がほとんど見えなくなり
白い杖を上手に使って歩いています。

知的能力も低下した今 寄り添って通院していたのは
彼女ではなく 彼のお母様でした。

 

数多くの高齢者の介護にかかわり
多くの家族の悲しみや 苦しみを 私は見てきました。

でも 皆さん そんな中から幸せを模索し
喜びを見つけています。

 

でも 若年性認知症は違ってました。

若いゆえ 家族に余裕がなく
幸せや希望を見つける事が出来ないのでしょうか。

子供と介護を天秤にかけ 彼女のように
やがて 離婚に至るのでしょう。

彼女との再会は 介護の世界で働く今の私に
大きな布石を投じました。

「介護とはなにか?」
介護とは介助ではなく
「護」・・守り、見つめることだと。

 

若年性であるほど
この意味合いを 深く考えさせられた 彼女との再会でした。



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