歌を歌おう!!
皆さんは、大きな声で、大きく口を開けて歌を歌うことがありますか?
私たちのデイケアは、その日の最後に、必ず歌を歌います。
子供の頃の唱歌や懐かしい歌謡曲などなど・・・
歌は時代を飛び越え、悲しみを乗り越え、喜びをもたらしてくれます。
トシコさんはそんな歌の時間が大好きです。
いつもいつも笑顔いっぱいで、大きな口を開けて、
大好きな歌を歌ってくれます。
でも、そんなトシコさんでも、どうしても歌えない歌があります。
初めは頑張って歌っているのですが、
まもなく、涙がこみ上げてきます。
それでも、頑張って、頑張って歌い続けます。
しかし、その声は涙声になり、嗚咽になり・・・
とうとう トシコさんの歌は止まってしまいます。
「トシコさん、泣いていいからね。
お母さんのこと思い出していいからね。」
そういいながら、トシコさんの肩をさすると
小さくうなずき 泣き続けます。
トシコさん、「ふるさと」を歌うと
必ずお母さんを思い出します。
小さい頃に逝ってしまった お母さん
うつろな思い出のはずが 「ふるさと」を歌うと
その思い出は 嵐のようによみがえるのです。
だから、この歌だけは、トシコさんは歌えません。
元気な歌声は いつしか「お母さん お母さん」と
幼い迷い子のように
母を探す声に変わるのです。
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