帰らないご主人を待ち続けて
今日は、今でも亡くなったご主人の帰りを待っている
おばあさんのお話をしましょう。
ヨシエさんは5年前にご主人を亡くされました。
ご主人が 亡くなる時にすでにアルツハイマー病を発症
現実と頭の中の事が 十分に把握できなくなっていました。
そんなヨシエさん ご主人が亡くなってからは
離れて暮らす 娘さんと年老いたお姉さんが
お世話をされてます。
でも 夜はひとりぼっち。
きっと寂しいだろうな~ と思っていたのですが
ヨシエさんは ご主人は ちょっと出かけただけだと思ってるのです。
ヨシエさん お葬式をしたことも
亡くなったと家族から知らされたことも 覚えていないのです。
何度となく 娘さんが
「お父さんは 死んだのよ」とヨシエさんに話すのですが
「あなた 何言ってるの。変な事言わないで」と怒る始末
とうとう 娘さんもお姉さんも
ご主人の死には 触れなくなりました。
そして ヨシエさんは 今でも
ちょっと出かけたご主人の帰りを待ってます。
夜になると お布団を敷いて
まるで「先に寝るわね」と言わんばかりに 床に就き
そして 朝目が覚めて ご主人がいないと
食卓に お茶碗とお箸を並べます。
もちろん お料理なんて 出来ません。
真っ黒に焦げたパンや 買い置きされた菓子パンが
ヨシエさんの朝食ですから。
朝9時 デイのスタッフがお迎えに行くと
「今 主人が帰ってくるから 私今日は家にいなくっちゃ」と
通所拒否
毎日毎日 この繰り返し
変わることなく続くヨシエさんの朝
帰らないご主人を こうやって ヨシエさんは
いつまでもいつまでも 待ち続けるのです。
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