救世主と泣き虫天使

1年前の若い介護職員さんとの休憩室での会話です。


「お若いですが、この仕事に入ってどれくらいですか?」と

私が訪ねると

「3年目です。子供が保育所にはいってから働いてます」

「ま~、お子さんがおいでるんですか?

若いから、独身のお嬢さんだと思ってました。」

と、私が言うと


彼女はニコニコと恥ずかしそうに笑い返してくれました。

「じゃあ、今お子さんは小学生?」とまた私が聞くと

「上の子は小学生ですが、下の子はまだ保育園で」

「あら~大変なのに、偉いわ~。

ちゃんと 仕事と子育てが両立出来て。

きっとご主人もいい方なんでしょうね。」とつらつらと

おばさん目線で話しかけていたら


突然、彼女が涙ぐんだのです。

「ごめんさい。私 気に障る事いったかしら。

ごめんなさい」

繰り返し謝る私に 彼女は ただただ首を振るだけ


「違うんです。実は・・・私の主人は自衛隊で

今 福島にいるんです。」


今から1年前の会話


あの福島原発の事故直後

彼女のご主人は 2人の男の子と若い奥さんを残し

身を投じて 見えない敵と闘いに、行ったのです。

福島を守るため 日本を守るため そして家族を守るために


「毎日 毎日が 不安と恐怖で

体が震えて 子供を抱き締めるんです。

でも ついつい涙が 訳もなく流れて。

ゴメンナサイ、なんだか最近泣き虫になっちゃって」


彼女は 笑いながら涙を拭い

そのまま 走るようにフロアーに戻りました。

遠くの方から 利用者さんと一緒に笑っているその笑顔

さっきまでの泣き虫お母さんではありません。


そんな けなげな様子を 私は遠くから見て

「ご主人が救世主の一人なら

あなたは利用者さんの天使ですよ。」


そっと つぶやいた お昼休みのひと時でした。



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2 Responses to “救世主と泣き虫天使”

  1. 自衛隊も大変ね 私の息子は地震の翌日から 行きました 10日ほど 行っていて 又2週間後にまた行きました その時は放射能のことはいわれなかったです 職務(警官)なので命令には忠実に自分が選んだ道やから と 親は強いですけど お嫁さんの立場だと複雑ですね 介護ママの前で泣ける環境はいい職場ですね

  2. 介護ママ より:

    >おばちゃんさん
    おばちゃんの息子さんも行かれたのですか。待ってる家族の心中は複雑でしたね。でも、現地の皆さんや自衛隊警官の方のご苦労を思うと、そんな事は言ってはいけないと、全ての人が自分たちに言い聞かせていたのだと思います。

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