不安から先生に会うために救急車で来院

心配事があると すぐに心臓がたなびくマサコさん

朝 お孫さんや息子さんが出勤して
自分一人が家にいると
寂しさと不安から 不安で不安で 押しつぶされそうになるのです。

こんな時は デイケアのお迎えに伺っても
電話にもでないし チャイムをおしても返事もありません。

お布団かぶって 丸くなってます。

でも、先日 いつもと違う事態が起きたのです。

スタッフが 到着の電話を入れると
「助けて~ 助けて~」と哀願するような
悲痛な叫びが 電話口で聞こえてきます。

スタッフがマサコさんの家まで行くと
鍵はあけてあり スタッフが中に入ると
マサコさん パニックで 焦りと半泣きで
取りとめのない言葉を並べるばかり

とにかく なだめて 落ち着かせて デイまでお連れしました。

温かいお茶を飲んで頂き 心を落ち着かせてもらったところで
私は ゆっくりと マサコさんとお話を始めました。

「マサコさん どうされたのですか。」と聞くと
「お薬が切れてどうしていいか分からなくて
心配になって 不安になって何もかもがわからんくなったら
心臓がバクバクなりだして このまま死ぬかと思った」と

マサコさん まるで興奮が再燃したように
一気にその時の不安を 喋り始めました。

『お薬は ちゃんと 家族が用意してあるからなくなるはずないのに。
なんでそんな事言うのかな』
と思いながら マサコさんとの会話を続けます。

すると 思いもよらぬ事がわかったのです。

マサコさんは 奥田舎の 車で3時間余りかかるところから
引っ越してきました。

お友達も 親戚もなく、お嫁さんは 亡くなり
頼れるのは 息子さんとお孫さんだけ

そんな不安な中で 心の支えになっていたのは
お薬を出してくれる 主治医の先生です。

でも 病院にいっても 数分間で診察はおわり
十分な話しができません。

それで マサコさんが取った究極の手段

それは 救急車での来院でした。

「この間 救急車で夜来たんに 先生にあえなかった」と

「マサコさん 先生にあうために救急車できたのですか」
と私が驚いて聞き返すと

「夜なら 先生とゆっくり会えると思って。
救急車だと きっと来てくれると思たけど。
先生 おらんで 朝になったら 帰された」と

なんだか 結構無茶苦茶な話かもしれませんが
マサコさんの取った一世一代の大芝居

なんだか 自分たちへの戒めにも聞こえてきました。



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