認知症の父の介護への不安。家族の想い
母を心配するあまり
父を疎ましく思う娘さんのお話をしましょう。
退院を数日後に控え
デイケア利用にあたっての
サービス担当者会議 に伺った時です。
奥さん(85歳)は半泣きでうつ向き気味
娘さん(40代)は少々不機嫌な顔で
私達を出迎えてくれました。
「何か気に障る事でもしたのかな」
と素朴な疑問を持ちながら
時間は流れました。
10分ほど経過してから
おもむろに 娘さんが 口を開きました。
「私は 母が一番 心配なんです。
父の介護で 母が倒れないか それだけです。」
そうか~
娘さんは母を心配し
奥さんは介護負担に怯えていたのです。
悶々とした胸中を察してもらえず
過ぎていく 話し合いに憤りすら覚えたのでしょうか。
家族が求めているのは 完璧なサービスではなく
安心できる サービスだったのです。
こんなことって ありませんか?
太陽とその周囲を回る衛星のような介護ではなく
太陽につっ込んでくるロケットが欲しかったのです。
それは 形ではなく 精神的拠り所。
つまり 娘さんが望んでいたのは
父のためのサービスではなく
母のためのサービスなんです。
そして それをストレートに約束してくれる
安心の言葉だったのです。
退院の日 病院を出る娘さんに
「何よりも お母さんを守るためのサービスです。
私達を信じて下さい。」
奥さんには
「お母さん 自分一人で背負わないでください。
必ず 私達が全力でお力になります」
初めて見せたこの親子の涙に
自分達の役割をあらためて 再認識し
深く反省した 瞬間でした。
これは
「ありがとう」の言葉にも出会えず
空回りしている 自分達の姿を垣間見た出来事でした。
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