明日も生きましょうね
癌末期に入り、デイケアを中断したミツコさん
入院した事だけは耳に入ったものの
その後 音信は途絶えました
それから数カ月後
病院のロビーを通りががった私の後ろから
か細い声が聞こえてきました。
振り返ると痩せて うつろな目をしたミツコさんです。
「生きてた!」
なんて失礼な事を私は思ったのでしょう。
でも 正直本心です。
もうダメだと思っていたミツコさん
まるで何かにしがみつくように 痩せた風貌から
あてもなく流れる涙
あまりにも痩せた姿のためか
車椅子の上にある手首が やけに大きく感じます。
その大きな右手がゆっくりと上を向き
大きくパタパタをなびかせ
私を呼んでます。
「せんせい わたしゃ こんなんなってもた。
ほんでも わたしゃ こうやって生きとるわ」
「うん うん」
そのミツコさんの消えるような声に返す言葉はないものの
やっぱり 生きてる事に感謝して
痩せた手を 力いっぱい握りました。
「せんせいの手 あったかい
やっぱり わたし 生きとるんやね」
そうなんですよ。
ミツコさん あなたは 今日もそして 今も生きてるのですよ。
だから 明日も生きましょうね。
いえ 生きてて下さいね。
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