「うお~」と泣いたおばあちゃん 作業療法士の現場
今日は忘れられない あるおばあちゃんとの
再会のお話をしましょう。
ツヤコおばあちゃんが 初めてデイケアに来た時は
ちょっと ふらふらしてますが 自分で歩いていました。
おトイレも たまに 失敗しますが
自分ですませていました。
会話の内容も 真面目なのか冗談なのかわからない
楽しい話題がいっぱいで
いつも 笑いを誘う楽しい方です。
でも
日に日にツヤコおばあちゃんの容態は悪化していきました。
おばあちゃんは 専門医の受診をしていないため
その疑問は 焦りと不安を募らせるだけです。
治療をしていない病気の進行とは 速いもので
瞬く間に おばあちゃんは 歩けなくなり
知的能力も低下 食事も一人では取れなくなりました。
いつとはなくデイケアも遠のき
やがて衰弱のあまり 自宅で全く動けなくなり
救急車で大学病院に運ばれました。
そこで初めて
「正常圧水頭症」と診断されたのです。
この病気 治療をすると 改善できるのです。
でも 娘さんは 経済的事情で
治療のための手術をしませんでした。
自然なままに
おばあちゃんを見送ることを決めたのです。
治療をしない事で大学病院から転院となった ある日
偶然リハビリ室で 私はおばあちゃんと出会いました。
喋べる事も 笑うこともない
痩せたおばあちゃんの姿は
デイケア当時の面影はありませんでした。
そして
「おばあちゃん 私の事忘れているだろう」と
背を向けた その時です。
後ろから「うお~」という
大きな泣き声が聞こえてきました。
振り返ると
おばあちゃんが 目を大きく見開き 涙を流し
私に向かって 両手を広げているのです。
おばあちゃん 私を覚えていてくれたのです。
「ごめんなさい ごめんなさい、背をむけて ごめんなさい
忘れているなんて思ってごめんなさい」って
おばあちゃんの小さな手を握り
何度も何度も謝りました。
そして この再会から まもなく
おばあちゃんは亡くなりました。
たとえ認知症が進んでも
人はその人らしく 最後まで
変わらず生きていきます。
変わるのは その人を取り巻く 周囲の目です。
私はおばあちゃんだけでなく
おばあちゃんとの楽しい思い出まで
忘れかけていました。
介護に携わる者として
深く反省したツヤコおばあちゃんとの再会。
もしかしたら おばあちゃん 私に教えたくて
あの時「うお~」と叫んだのかもしれませんね。
ツヤコおばあちゃん ありがとう。
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