中途失明の介護とリハビリ、父から子への想い

中途失明の介護とリハビリ、父から子への想い

今日は中途失明のおじいさんのお話をしましょう。


イチロウおじいさんが 車椅子でデイケアに初めて来たのは

まだ肌寒い4月の初めです。


私は「歩けないのですか」と尋ねると

「いや、歩けるんだが、目が見えなくて不安なんだ」

とおじいさん 苦笑いで答えられました。

「いつから目が見えないんですか」と聞き返すと

「正月くらいかな、年末はまだ見えていたんだ」


半信半疑のような言葉ですが

おじいさん 嘘をついている様子ではありません。

ホントに 3ヶ月足らずで 視力をなくしたのです。

でも、おじいさんの純朴な人柄と穏やかな語り口調は

周囲の人々を和やかにし、

目が見えないハンディを感じさせません。


イチロウおじいさん デイケアでのリハビリにも慣れてきたある日

ポツリと一言

「生きていても仕方ないな」とつぶやかれたのです。

不安に思って「そんなことありません。

息子さん達のためにも頑張ってください」と返したのですが

「こんな親 生きていても仕方ない」と言われました。


この時 返す言葉もなく躊躇した私ですが

ふと 癌で弱り行く母の最期を思い出したのです。

病気の進行と共に 意識が薄れていく母の傍で

「喋らなくてもいい 動けなくてもいい 

ただ生きていてくれるだけでいい」

と、奇跡を信じ 私は祈り続けていました。


今 イチロウおじいさんと母への思いが重なり

「○○さん、子供にとって親は

目が見えなくても ひとりで歩けなくてもいいんです。

生きていてくれる それだけでいいんですよ。」と話すと

おじいさん 少し照れながら「そうか~」と一言

それからは「生きていても仕方ない」と

言わなくなりました。


その後 おじいさん 転倒 骨折を起こし 

予後の悪さから在宅困難となり

施設に入所することになりました。


退院後 子供のために頑張ったおじいさんが向かった先は

子供のもとではなく 知らない施設です。


でもおじいさん 快く入所を受け入れたのは

不自由な体を抱えた親が見せた 

最後の愛情だったのかもしれません。

 



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6 Responses to “中途失明の介護とリハビリ、父から子への想い”

  1. 果成咲慧 より:

    こんばんは。
    うちのパパは足腰が弱くなり、歩くのが困難になって最近はつえをついて歩いています。
    でも、私は、パパにずっとそばにいてほしいです。
    施設になんて行かせたくないです。
    イチローおじいさんは子供たちのために施設に行くことを決意されたんですね。
    なんだか、切ないですね。
    目も見えなく、足も悪くなってしまって、不安でいっぱいだと思います。
    それでも、自分の事より子供のことを思って施設に行くことを決意されたのですね。
    親の愛情の深さを感じました。

  2. 介護ママ より:

    >果成咲慧さん
    ありがとうございます。親が子を思う気持ちって、永遠なんでしょうね。特にご苦労を重ねた高齢者ほど。

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