夫と息子の死を乗り越えたおばあちゃん

夫と息子の死を乗り越えたおばあちゃん

今日は、おばあちゃんが 

私に話してくれたお話をしましょう。


デイの中を 所狭しと走っている70代後半のおばあさん

ひときわお元気なご様子は、

場違いでは と思うくらいでした。

しかし それからまもなく おばあさんは 休みがちになり

しばらくぶりで お会いした時は 別人のようでした。


おばあさんは 以前 静脈瘤の手術をしたのですが

その後、徐々に日常生活にも支障が出るようになりました。

おばあさんが 私のリハビリを受けることになったのは

それから 間もなくのことです。


そして リハビリにも慣れてきたある日

おばあさんの口から 悲しい現実を聞くことになりました。


おばあさんのご主人が 癌で亡くなった後 

長男さんが こちらに転勤となり

単身 おばあさんと同居してくれるようになったのです。

おばあさんがデイケアに来所されたのもこの頃です。

 

おばあさん 息子さんが傍にいて

嬉しかったのでしょう。

だから とっても元気だったのです。


でも幸せも つかの間でした。

その2年後 長男さんが 癌に冒されたのです。


ご主人の次は長男


おばあさん 身も心も へし折られるような

そんな悲しさと絶望感にさいなまれました。

「なぜ 自分だけが 自分の周りだけが」

自分を責め 自分の運命を呪い悲しみました。


そん中 長男さんが 痩せて 言葉も発せなくなった ある日

身を絞るように言った一言


「母さん 親不幸してごめんな」

 

おばあさん 老いた手で 息子さんの手を 強く握り

赤子を抱くように やせた体を抱きよせ

「いいよ いいよ ありがとう」と

抱きしめました。


それからまもなく 長男さんは

ご家族が見守る中 亡くなられました。


おばあさんの悲しみは 

計り知れないくらいだったと思います。


今 目の前にいる私にそんな話をしてくれるおばあさん

亡くなった自分の母親とかぶりながら

私も又 涙していました。


その時おばあさんが言ったのです。

「先生 私のために 泣かないでください。

先生にはリハビリを待っている患者さんがいるのですよ。

先生 話をきいてくれてありがとう。

でもね、悲しい事ばかりじゃないんです。」


実は 長男さんは 亡くなる直前

弟の二男さんに 「母ちゃんを頼む」と言っていったそうです。

そして 今 二男さんが また勤務異動で こちらに単身移り

同居してくださっているのです。


介護されている立場が

いつのまにか 看病する立場になり

いつしか 見送る立場になる


そんな現実は 決して少なくありません。

そして 色々な人生を抱えた方々が

安心して過ごせる そんな時間を提供していくことが

自分に与えられた 責務であるように この時 感じました。


それが ほんのひとときでも 

ほんの気休めでも いいのです。

その方が 涙を拭いて 

前を見てくれる きっかけになるのであれば 本望です。


私はそんな 存在になりたい。

この仕事を与えられたことに 心から感謝して

 



介護でお悩みの方へ

介護ママの伝えたい介護のツボは、
介護でお悩みの方のお力になりたいと考えています。

どうしたらいいか分からないなどお悩みのことがあれば、
こちらの連絡先にお気軽にご相談ください。

可能な限りお力添えさせていただきます。


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38 Responses to “夫と息子の死を乗り越えたおばあちゃん”

  1. 介護ママ より:

    >まゆりさん
    まゆりさん ありがとうございます。おばあさんの思いもさることながら、長男さんの悔しさも想像を超えたものだと思います。そして、おばあさんの母親としての姿は見習いたいです。

  2. 介護ママ より:

    >スカイツリ―さん
    スカイツリーさん、こんにちわ。お母様はあなたと、お父様の深い愛情に包まれて旅たたれたのですね。いいお話ありがとうございます。又、お越しください。

  3. のうえん より:

    僕も医者からは塩分の過剰摂取は注意されています。
    ですが今日の介護ママさんのブログに涙しました。
    涙で失った塩分を何とか取り戻しました。(笑)
    普段、僕の別のブログでは自分でも呆れるくらい
    間抜けな、そして面白可笑しい文章を載せて
    います。
    そのような僕ですが、こと介護のお話では決して
    冗談を言う気持ちにはなれません。
    介護は決して人事ではなく、僕にとっても目の前に
    せまっている切実な問題です。
    生涯を丈夫な体と精神で全うする人は多くは無いものと思えます。多くの方が何らかの介護を将来、支援
    される必要性が出てくるのではと思っています。
    介護のあり方が家族なのか施設なのかは人それぞれでしょうが、介護に携わる方の体力や精神力は並大抵の事ではないものと思えます。
    今日の介護ママさんのお話にあった、ご主人と長男を
    なくされたおばあさんの事です。
    気丈なこの方は涙を流している介護ママさんに
    「自分の為に泣かないで・・・」そして「ママさんのリハビリを待っている方の・・・」って有りました。
    僕もこのおばあ様の言葉に涙が溢れました。
    僕の年代では、特に男は女々しく泣くものではない
    と教えられました。
    泣くのは親しい人が亡くなった時だけだとも教わり
    ました。
    確かにその事も理解できますが、それでも他人とは
    いえ、懸命に生きた方の悲しみを共有する事が
    決して女々しい事だとは思えなくなってきました。
    介護ママさんが介護の現場で日々色々な場面に
    向われ、あるときは喜び、あるときは利用者さんと一緒に涙を流す事はとても素晴らしいことだと思います。
    悲しみにくれる、利用者さんの前で涙も見せず、
    事務的に事を運ぶときっと利用者さんの悲しい
    お気持ちを踏みにじる事になるのではと思って
    しまいます。
    唯、介護ママさんのお仕事の立場上、気配りだけで
    なく、利用者さんへの癒しも同時に行なわなければ
    ならないと思えますのでママさんご自身の体力、精神力もとても気がかりです。
    きっと利用者さんからの喜びの顔が何よりのママさん
    への癒しになるのではと考えました。

  4. 果成咲慧 より:

    こんにちは。
    介護してくださる人が、みんな介護ママさんみたいな人ばっかりだといいのにと思いました。
    そのおばあちゃんのお子さんたちはいい息子さんたちでよかったですね。
    私も介護ママさんを見習いたいと思いました。

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