悲しい現実と明るい夢

いつもニコニコ笑っているウメコさん

お箸が転がっただけでも笑い転げるウメコさん

色白で　目尻には笑いシワがたくさんあるウメコさんは

足元のおぼつかない利用者さんに手を携えたり

初めてご利用された方には　気さくに声をかけられたりと

とても　優しいおばあさんです。

そんなウメコさん　息子さんご夫婦が共働きのため

ショートスティとデイサービスを兼ね合いながら

家庭生活を送っています。

忙しい息子さんご夫婦ですが

洗いたてのズボンと　アイロンのかかったブラウスには

お二人の　精一杯の愛情が伺えます。

明るいウメコさん　私がフロアーに上がったのを見つけると

「キャー！！」と言って　両手を合わせてさすりながら

私の傍まで走って来て下さいます。

隣のユニットにいても　机をはさんでいても

必ず　走って傍に来て　私の手を握って下さいます。

まるで　温かいクッションのような　フワフワした手は

疲れた体も心も包み込んでくれる安心感があります。

でも　ウメコさん　自分の事は　何にも知らないのです。

ご自身の体に　体中に　病魔が潜んでいる事を

来週　手術することも

助かる手術ではなく　当座しのぎの手術だということも

息子さんに頼まれました。

｢母には　何も言わないでください。

検査だと言って入院してもらいます。

母の笑顔を最後まで僕たちは見続けたいから。

だまして入院さすなんて　ひどい息子ですね」と

「いいえ、ひどくありません。

みなさん　ウメコさんの笑顔が大好きなんです。

ウメコさんが帰ってくる事を　私達は信じてます。待ってます。

ウメコさんに『元気だしなさいよ～』って

笑い飛ばされちゃいますよ」

悲しい現実に明るい夢

サイコロをふるような　息子さんの決断に

私は　拍手を送りたいと思います。